DCマイクロフォン 半導体式

音楽を愛する電子回路
オーディオDCアンプ製作のすべて下巻 掲載


数あるDCアンプの中で作らないと決めていたアンプが2つある。
一つはターンテーブル制御アンプで、これはシンプルなアンプが発表されてあっさり作っ
てしまった。

もう一つはDCマイクロフォンである。
DCマイクを作っても録音する機会が皆無である、また楽器を演奏する友人もいない。

先日、ご近所さんのDCアンプファンのKさん宅に私の作ったD/Aコンバーターを持ち
込み試聴会を行った折り、Kさんが作った真空管式のDCマイクを見せていただいた。
そしてKさんから「録音のチャンスは結構ある。」と伺った。
これならばDCマイクを作ろう。

禁断のアンプ作りに取り掛かった。

DCマイクはマイクカプセルの直下にDC
アンプをつなぎ一気にラインレベルまで
増幅させるワンポイントマイクである。
それにより超好感度となりSN比は向上
する。

しかしマイクの下にはアンプの筐体と給
電ケーブルが存在する、電源も別途必
要になる、使うには少し厄介なマイクだ。


DCマイクに使用するマイクカプセルはシ
ョップスのMK−4かAKGのCK−1だ。
ショップスのマイクは入手できるがアマ
チュアには高価過ぎる、AKGのCK−1
は製造が終了して入手ができない。
CK−1と同じ単一指向性のCK61−U
LSが現行品で入手ができる。
CK61−ULSは一ヶ月の納期が必要だ
そうだ。

マイクカプセルの入荷までの間、基板作り
とケース加工を行った。
金田氏の使用しているケースは既に製造
中止になっている、同じようなケースもあ
るが無骨な印象が拭えない。
ここはタカチのUC6−3−8GXを使おう。
このケースはアッテネーターに使った私
のお気に入りのケースである。
小振りで前後パネルと本体が4つに分解
できるので使い勝手が非常に良い。
しかしこの構造なので共振には注意が必
要だ。
このケースを極力小型にするため厚みを5
o、高さを10o削った。
一番精度が要求されるのはマイクカプセル
を固定する架台だ、コ型チャンネルとL型ア
ングルを削って作る。
フライス盤などがあれば簡単に作れるがア
マチュアの工作はそうは行かない。
金ノコ、ヤスリを駆使して現物合わせで削
り込む。

基板は製作記事と同じに作ると幅が大きく
ケースに収まらない。
抵抗器1個を基板の裏側に接続して1列分
を削ってケースに収めた。
調整も問題なく出来てあとはマイクカプセ
ルの入荷を待つだけだ。

発注して一ヶ月後、マイクカプセルが届
いた。
オーストリア製だ、ウイーンフィルが育て
たマイクと考えていいだろう。
私がオーストリアの製品を意識して使う
のは初めてだろう。

早速、組み込む事にした。
マイクカプセルから直接リード線を引き
出す、HOT側はそのままはんだ付けが
できるがGND側ははんだ付けするスペ
ースがない。
内側に付いている絶縁樹脂を少し削って
はんだ付けを行った。
ケースの内側は共振対策と絶縁のため
ゴムシートを張り付けた。
ケースの4面が分解できるので極めて配
線し易い。

問題なく完成した。

作らないと決めていた2つのアンプを完成
させてしまった。


このDCマイクを作るにあたってDCマイク
に詳しいKEPHSさんとご近所のKさんか
ら数々のアドバイスをいただいた、感謝。

電池ケースを作った。
DCマイクは電池で駆動することになる。
アンプを駆動するのに±36V・単三電池48本、成極用に+62V・006P6本と単四電池
2本が必要だ。
これだけ大量の電池を録音現場に持ち込むにはしっかりしたケースが必要だ、しかも極
力小型にしたい。
ホームセンター、100円ショップ、秋葉原のパーツ店などケースを探し歩いた。
打って付けのケースが見付かった、タカチのGB225−40だ、このケースは必要な電池
を効率よく収納できる。
電圧をチェックできるようにテスター棒を差し込む端子を取り付けた.。
電池駆動アンプで過去に数回過放電による液漏れを経験している、充分な注意が必要だ。

完成後、録音実験のために航空機の
離着陸の音を録ろうと新潟空港の滑
走路近くに出来立てのDCマイクと録
音機を持ち込んだ。

ここは阿賀野川が日本海に流れ込む
河口付近で、新潟空港の誘導灯とB
滑走路28の中間点だ。
着陸寸前の飛行機を真下から見るこ
とができる飛行機の進入最低高度ま
で1mというスリリングな飛行機ビュー
ポイントだ。
週末はカメラを持った飛行機マニアも
多い。
(厳密には立ち入り禁止区域) 地図

早速マイクを三脚に取付て録音機に
接続した、ヘッドホンで音を確認する、
「ボーボー」「ガサガサ」などの大きな
風切り音がする。
付属のウインドスクリーンを取り付け
てみるがノイズは軽減するが使用範
囲には収まらない。
たとえ無風でもジェットエンジンの噴
射で風切り音が入ってしまう。

風はそよ風程度だが皮肉にも超高感
度の威力を大いに発揮してくれること
になった。
もっともこのマイクカプセルは屋内用
で屋外の生録などもっての外なのか
も知れない。

やはり室内で音楽を録音してみなけれ
ば本来の実力は判断できない。


後日KEPHSさんから激励のメール
をいただいた。
その中に「風切り音はAKGのマイクの
せい、というよりDCマイクの低域カット
オフがかなり低いため」とのことだった。
KEPHSさんはホールの空調で風切り
音に悩まされることもあるらしい。

やはりDCマイクは高感度、広帯域で
あるため使い方が難しいようだ。
野外録音の場合LCFが必要だろうか?

 
←録音現場の360度パノラマ写真

2008年11月15日完成


  






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