bP69
6C33C−B ハイブリッドパワーアンプ

8Ω負荷38Wx2 電子式保護回路搭載

最新のDCパワーアンプの音が聴きたくなった。金田明彦氏発表の数多い種類のアンプの
中で6C33C−Bが以前から気になっていた。

6C33C−Bという真空管がある。
旧ソビエト連邦で軍用に開発されたレギ
ュレーター管だ。なんとも堅牢そうである
が3つの角が愛らしい。

1976年9月6日、函館空港に冷戦下の
ソ連からミグ25が飛来した、その後日本
の調査で真空管が使われていたことが
判明した。
当時は「今どき真空管を使っているの?」と
思った、しかし軍用機には真空管が有利
らしい。
この真空管が6C33C−Bであったと噂され
たが真相は定かでない。

冷戦終結後、この6C33C−Bが日本で
容易に入手できるようになった、ここは平和
利用しよう。

金田明彦氏は「MJ無線と実験」に6C33C−Bを
使ったアンプを過去に6機種発表している。

最新のbP73(2003年6月号)の製作を検討し
たが前段にWE418Aを使うので費用がかさん
で難易度も上がる。

非常にシンプルな回路構成で作り易そうなbP69
(2002年8月号)のハイブリッドパワーアンプを
作ることにした。
2004年4月にケース加工を開始して1ヶ月で
一気に組み立てた。
しかし落とし穴が待っていた。

アンプ部の調整がうまく行かず動作しない。
電源電圧は正常、保護回路は問題なく動作す
る。

(MJ誌2002年8月号47pの調整項目を引用)

(引用)
初めは電圧増幅段のチェックだ、
電源をオンしRcの端子電圧Ecを測定する。
・・・・・・・Ecが−70V〜−100V程度ならOK
だ。・・・・・・VR1を回転して、ほぼ等しい電圧
に調整できることを確認する。

(結果)
VR1を回転することにより、やや高いものの
−104Vで等しく調整できる。

(引用)
次にVR2を右に回転するとEcが小さくなり、
0Vに近づくことを確認する。・・・・・ここまでで
きれば一安心だ。

(結果)
VR2を回転してもEcは−104Vのまま変化
しない。
ここで行き詰まって一安心できない。

アンプ部の配線を入念にチェックしても問題な
い、部品の不具合を疑いアンプ部の部品をす
べて取り替えて配線し直しても変化なし。
ここで行き詰まり2004年5月お蔵入りとなっ
た。

2007年11月原因追及を再開した。
過去のMJ誌やMJ別冊を眺めたりWebで調
べたりして悩んだ。

各所の電圧を入念にチェックした、定電流回
路付近の電圧が規定値との乖離が大きい。

結論は簡単だった、2002年8月号の39頁
の回路図のダイオードの値が違っていた。
正規のダイオードに交換したら問題なく動作
した。
Ipは指定の330mAとしたが6C33C−Bの
プレートの一部がほんのりと赤くなる、安全の
ためIpを300mAに落とした。

音は真空管独特の雰囲気を醸しだす、特に
低域の響きはすばらしい。

ただ、発熱が凄まじい、ケースは触れられない
くらい熱くなる。夏は電気ストーブにあたりなが
ら音楽を聴いているようなものだ。
放熱対策を考えなければならない。

冬季限定アンプかもしれない。
夏季専用アンプも作くらなければならないか?

落とし穴にはまってしまって完成まで3年8ヶ
月も掛ってしまった、その大半が物置に眠っ
ていた。

【製作中のトラブル】
保護回路制御部から±151Vを終段管に給
電する。
LchとRchの2本を50芯の太いケーブルで
狭い基板から引き出すのが難しい、案の定
+151Vがショートしてしまった。
保護回路制御部が壊れてしまった。制御部
のCR以外の部品を全て新しいものに取り
替えて作り直した。
対策として2SK851のSとDのリード線を基板
から5oほどのばし空中配線とした、SとDの
リード線の根本は絶縁と曲がり防止のためイ
ンシュロックタイを巻いた。
保護回路DC検出部

保護回路制御部

保護回路DC検出部と制御部
制御部は裏向きに配置

電源部ディレー用タイマーリレー

裏 蓋


電圧増幅部
 ケースの上部から調整できるようにVR(COPAL:TM−7P)を基板から15o浮かして配置する。
ダイオードは放熱を考慮して基板より浮かして配置する、左手前(緑)が温度保証用サーミスター。





【落とし穴】
「MJ無線と実験」のDCアンプの製作記事に致命的な誤植が多い。
DCアンプシリーズ以外の記事は検証していないので全てがそうかは分からなが、出版社は編集
者の良心と責任で誤植が判明したら直近の発売号で訂正すべきであると主張したい。
少なくも回路図と定数は間違いのないように願いたいものである。
私のように電子回路に精通していない者にとって不動作の原因解明は至難の業である。


【MJ無線と実験2002年8月号 bP69の誤植】
◎39頁 「図3」  (誤) → (正)
     D1 HZ6−C2  → HZ12−B2
     D3 HZ12−B2 → HZ6−C2

◎44頁 「図11」 右の配線図
     Tr6,Tr7   B → C  C → B


2007年12月24日完成
その後の改造

真空管式DCプリアンプを完成させ、ほぼ最新のDCアンプでシステムが完成した。
ただフォノのゲインが高すぎて夜間は勿論のこと、昼間でもフォノの再生ははばかられた。
ゲインを落とすためにプリアンプとパワーアンプ間にアッテネーターを入れてみたが
音質の低下が気になるところだ。

最新のパワーアンプでATTなしでレベルをコントロールする方法が発表された。
早速この方式をこのパワーアンプに採用してみた。
抵抗器1個を交換し、少しの配線変更でレベルを調整することができる、ATTではないので
音が痩せることもない。

2009/1/22
修理

2015年9月左Chから「ガサガサ」というノイズが発生。
終段の真空管を疑い左右の真空管を差し替えてみた。
そうこうしている間に保護回路が動作し赤色LEDが点灯した。

11月になって修理を開始した。
裏蓋を開けて驚いた、真空管の発熱でヒーター配線などのリード線の被膜が
硬化している。
しかも両Chの基盤の一部が焦げている。真空管の発熱だけでなくTrもかなりの熱を
発生しているようだ。
故障の原因はここだ。一番焦げているTrをはずしてチェックする
一発で原因究明ができた。Tr7の2SA1967が熱によりパンクしたようだ。
このTrは生産完了品で入手困難となっている。たまたま手持ちがあったので
交換したら問題なく復活した。
ついでに再調整をした。

2015/12/7

アンプクーラーの製作

このアンプが完成して10年近く経つ。
2015年に大幅な修理を行ったが、またガサガサと異音がスピーカーから聴こえる。
そして時折保護回路が動作する。
真空管の発熱によるトランジスタやコンデンサの劣化が予想される。

そこで、アンプ冷却装置を作ることにした。
木材で木枠を作り冷却ファンを取り付ける。
下から送風して真空管やドライブ段の基盤を冷やす簡単な装置である。

音楽再生装置のため静音性にこだわりたい。
PC用DC12V静音型ファンを購入した。
静音設計ファンといえどもDC12Vでファンを回すと風切り音が気になる、
冷却効率は悪くなるが6Vに回転数を落とすと騒音は気にならないほど静かになる。

実際アンプを載せて実験してみる。効果絶大である、ファンなしではケースの上部は手が触れら
れない程に発熱するが、ファンを回せば手を触れてもほんのり暖かいくらいになる。
マルチメータの温度計でケースの真空管付近の温度を測定してみた、
80℃が60℃程度に冷却される。
もし夏季に冷却効果が低下したら、雑音を我慢して12Vでファンを回しても良いかも知れない。

これで安心して音楽が楽しめる。


2018/6/22 完成


  






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