bP79
ターンテーブル制御アンプ

テクニクスSL−1100用
オールIC構成 AC電源兼用型


DCアンプシリーズの中で絶対に作らないと決めているアンプが2つあった。
1つはDCマイクロフォンだ、録音システムを作っても録音する機会が皆無である。
もう1つはターンテーブル制御アンプだ。
ダイレクトドライブのターンテーブルのワウフラッターは測定限界以下とスペックにある、
あえてDCアンプでドライブする必要はない、回転ムラさえなければ良いと思っていた。

Webで調べてみるとターンテーブル制御アンプを作っているDCアンプファンは多い、
やはりDCアンプでターンテーブルを回すとLP再生の世界が変わるらしい。

2004年10月号「MJ無線と実験」にオールIC構成の制御アンプが発表された。
私にとって打って付けのIC構成で作り易そうな回路だ、これは作ってみるかと重い
腰を上げた。

当時、6C33C−Bのハイブリッドパワーアンプを製作中で、完成を見ずに壁にぶち当
たり迷走していた頃だ、このターンテーブル制御アンプを先に完成させ、勢いを付けて
ハイブリッドパワーアンプを完成させよう。

SL−1100用となっている、同じモーターを
搭載しているテクニクスのSL−120は所有
している。
しかし完全コピー派の私としてはオリジナル
通りSL−1100で作ることにした。

首尾良くネットオークションでSL−1100が
安価で入手できた。

筐体はしっかりしているがトーンアームが
少々頼りない。
ここは前から欲しかったSAECのWS−30
8SXに取り替えよう。
ネットオークションで入手したが発売当時の
定価を上回る落札価格だった。


モーター部は、SP−10MKU同等品とされ
ている。
3相ブラシレスモーターで15スロットのス
テーターと等方性の大型フェライト磁石の
ローターから構成されている。


ステーターから必要なリード線を引き出し
AT1を切り出して作った中継端子に繋ぎ
ダイエイ電線で制御アンプに接続する。

中継端子はL型チャンネルで本体に固定
する。
FGはストロボ縞からフォトインターラプター
で取り出す。

ストロボ縞とFIとの位置合わせと焦点距離
0.6oを正確に確保する事が重要だ。

2004年12月から部品集めを初めて、組立が完了したのが2005年5月だった。
組立は完了したがうまく調整ができない。
ターンテーブルは高速回転して制御されていないようだ。

位置信号発信器はきれいな正弦波を出力しているので問題ない。
フォトインターラプター(FI)の出力はいびつながらターンテーブルのストロボの模様
を拾っているようだ、しかしFGチェックポイントにはなにも出力されていない。
1MHzの水晶発信は問題ない、しかしクロックチェックポイントにもなにも出力しない。

まずはクロックパルスから調べよう。
1MHzの水晶発振をCD4059Aで分周して回転の基準となるクロックパルスを作り出す。
33.3rpmは120.045Hz、45rpnは162.050Hzの周波数が必要だ。

クロックパルスが出力されていないのは分周していないのか?
CD4059A周辺の配線を徹底的にチェックしたが間違いない。
それならとICの不具合を疑ってCD4059Aを取り替えてみた、結果は同じであった。
CD4059Aは都合4回入れ替えた。
2ヶ月悪銭苦闘してもクロックパルスは発生しない。

7月にコール田無でDCアンプ試聴会が行われた、その折り金田氏に質問してみた。
「やはりオシロスコープが欲しいですね、慎重に測定すれば必ず成功します」との
事だった。
オシロスコープは持っているがクロックパルスが現れない。
2005年8月、ここでパワーアンプに引き続き製作中断となった。
2台のDCアンプを完成させないままお蔵入りさせてしまった。


制御部 左手前が1MHzの水晶発信部 左奥が分周用CD4059A


左手前が±5Vレギュレーター、左奥が位置信号発信器
右が位置検出器及びゲインコントロール部



モータードライブアンプ 3個


電源部



(製作再開)
6C33C−Bハイブリッドパワーアンプが完成したので2008年1月からこのターン
テーブル制御アンプに再度着手した。
製作期間にブランクがあると前の感覚に戻るまでにかなりの時間を要する。
金田氏は「情熱があるときに一気に作ろう」と言っている、その通りだ。

オシロスコープを2年半ぶりに立ち上げた・・・・・
走査線が出ない、頼りの綱のオシロスコープが壊れてしまった。
無理もない、以前勤めていた会社からタダ同然で払い下げしてもらったものだ、生産
ラインの検査用として10年以上働き続けていた、そろそろ寿命であろうか。
ネットオークションで中古のオシロスコープを入手して調整に掛かった。

クロックチェックポイント、FGチェックポイントにプローブを当ててみた。
エエエッ・・・ なんとクロックパルス、FG共に問題なく出ているではないか、位相調整用
VRを回すとちゃんと位相ロックする。
要するにほぼ完成していたことに気が付かなかったようだ。

原因は何か?、オシロスコープの性能か?操作の不慣れか?多分後者であろう。
2年半のロスタイムがなんだったんだろう、オシロスコープが壊れたことで道が
開けた、災い転じて福となした、気を取り直して先に進もう。

ターンテーブルは回転はするが一ヶ所同じところでFIの出力波形がゆらりと揺れる、
またFGが歯抜けになったりでピッチが不安定だ。
MJ誌にあるようにターンテーブルのストロボ面を研磨してみるが変化はない、表面の
汚れや腐食によるものではないようだ。
ストロボの216個の丸の内1個が目視で確認できない程の変形があるのではないか。
このストロボ縞は元々FGを出力するためのものではないので、そこまで精度は要求
とされていないはずだ。

製作前から気になっていることがある。
FI、GP2S22の焦点距離は0.6o(MJ誌では0.7o)だ、FIの取付はMJ誌42頁
「図14」にあるようにコ型チャンネルに1.2oのアルミ板を張り付けてスペーサーと
する。
そしてコ型チャンネルの底部とFIの受光部がツライチになるようにFIを接着する。
この方法だとストロボ面とFIの受光部の間隔は1.2oとなる。
間隔が1.2oになると40%の出力が減少する、写真で言えばピンボケ状態になるの
ではないか?
ギャップを0.6oにするにはコ型チャンネルの底部とFIの受光部がツライチではなく
0.6o出るように接着すべきではないか?

早速やってみよう、GP2S22はアラルダイトでしっかり接着してあるので1.2oのスペ
ーサーをヤスリで0.6o削った。
後で考えたらGP2S22を壊して取り出し、付け替えたほうが簡単だった。
オシロで波形を見てみた、完璧にFGが発生している、これで完璧とLPを掛けてみた。
改善されて揺らぎが少なくなったがLPの片面再生に1〜2回揺らぎが生じ音程が狂う。

何が原因か?。
Webで諸兄の製作記とGP2S22のデーターシートを眺めていた、GP2S22の出力が逆相
ではないか?
FIの光量を多くすればFGの出力も安定するのではないか?
FIのアノードに接続するシリーズ抵抗430Ωを220Ωに交換してみた、今度はFIの出力が
逆相になりFGも安定した。

一部VRで調整しきれない箇所があるので抵抗値を変更した。

これで完成としよう。


位置信号発信器の出力。
82.1KHzの正弦波。

33.3rpm

45rpm
調整前のFG波形。
上段、FIの出力。
下段、モノステーブルを介したFG波形。
矩形波は出ているが、時々歯抜けになったりピッチが不安定だ。


FIの焦点距離調整後FGは安定した。

しかし時々揺らぎが生じる。



45rpm      ↓

33.3rpm

45rpm
FIの光量を増すためアノードに接続するシリーズ抵抗430Ωを220Ωに交換した。
FIの出力波形が逆相になって安定した。



33.3rpm

45rpm
調整後の波形。
上段、クロックパルス。(細い3本の縦線)
下段、FG波形。
FGがクロックパルスに付いたり離れたり細かに揺れている、位相ロック状態か?。
頑張って制御しているようすが見て取れる。




CD4059Aの出力

モノステーブルの出力
クロックパルスは極めて細い、拡大するとこうなる。




このアンプも完成までかなりの時間を費やした、オシロスコープ操作の不慣れによって
2年半の時間ロスだった。
完成しているのに完成していることに気が付かなかったことは誠に情けない。

CDが世に出てからはCD一辺倒でLPはほとんど聴いていなかった。
スクラッチノイズがなく操作が簡単なCDに傾倒していた。

今回、ターンテーブル制御アンプを作ってみて、やはりLPもいいなと思えるようになっ
てきた。
昔LPを聴いていた頃はJAZZしか聴いておらず交響曲のLPはほとんど持っていない、
これから中古レコード店で交響曲のLPを買いあさることになりそうだ。


【MJ2004年10月号の誤植】 (誤) → (正)
34頁 右21行 GS2S22 → GP2S22
34頁 右27行 29行 0.7o → 0.6o  (データーシートより)
35頁 「表1」 0.7o → 0.6o
36頁 「図2」 TL082の1番ピンと5.1KΩとの交点  交差→接続●
36頁 「図2」 82000pF → 8200pF(?)
         (SEコン82000pFは一般販売なし、写真の大きさから判断?) *1
37頁 「図4」 VR500Ω 3→1 1→3
38頁 「図5」 GP2S22のKとE  E → −5V (Web参照) *2
38頁 「図5」 MC14046B 3 →14 14 → 3 (Web参照) *2
38頁 「図5」 MC14011B 11 → 12  12 → 13  13 → 11 *2
         7・・−5V、14・・+5V記載なし
40頁 「図8」 78000AP → 78005AP
40頁 「図10」 橙 → 赤  白 → 橙  橙 → 青  白 → 黄
41頁 右3行  0.7o → 0.6o
42頁 左18行 ツライチになるように → 0.6o出るように
45頁 「図24」 左上 誤配線あり
45頁 右24行 大きい → 小さい (?)
44頁 「図20」は検証していないが誤植が多いらしい。(Web参照)


追記 2008年8月8日
「MJ無線と実験」2008年9月号bP98レコード再生システムを読んで。
*1 「図4」に修正はないが本文125頁右には8200pFとなっている。
   なお本機はSEコンではなくディップマイカを使用。
*2 128頁「図7」で修正済み。


2008年1月21日完成

2008/7/17
【その後の改造】

「MJ無線と実験」2008年9月号にbP98レコード再生システムが発表された。
bP79の改造型で制御アンプとイコライザーアンプをターンテーブルに内蔵するタイプだ。
本文にターンテーブルのSTART、STOPのスイッチを利用する回路が追加され
ている、早速この回路を追加することにした。
制御アンプ本体から±5Vをターンテーブルに引き込み基板を取り付けた。
今まで通り制御アンプ側でもコントロールもできるように基板に切り替えスイッチを付ける、
ついでにパイロットランプのLEDも追加した。
手元でコントロールできるので使い勝手が格段向上した。
本誌では回転数の切り替えもターンテーブル側で行っているがこれは内蔵型でないと
難しそうだ、この改造は次回にしよう。

2008年8月31日
ターンテーブルにお約束のオーディオテクニカAT666を取り付けた。
エアーでLP盤を吸引しレコードの反りを矯正するものだ、しかしDCアンプファンは
吸引せずに使うらしい。
LP盤の外周と内周部分のみゴムパッキンの上に乗っていることになる。
なぜこれで音が良くなるかは分からないがしばらく使ってみよう。

2008年12月25日


  






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