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MC/CD兼用真空管プリアンプ


ラインアンプを反転増幅と非反転増
幅に切り替えて入力信号を選択



真空管DCプリアンプの製作を2004年頃から計画していた。
主要部品は殆ど揃えた。
しかし6C33C−Bハイブリッドパワーアンプとターンテーブル制御アンプの完成が遅れていた
ためプリアンプの製作着手が大幅に遅れていた。

今までのプリアンプはMC専用機で、CDを聴く場合は別にCD用ラインアンプが必要だ。
MCとCDの切り替えは音質劣化を覚悟で出力信号をスイッチで切り替えるか、または面倒
だがRCAプラグを差し替えなければならなかった。

「MJ無線と実験」2007年10月11月号にスイッチ一つでMCとCDが切り替えができてスイッチ
には信号が通過しない画期的なプリアンプが発表された。
迷うことなく方針を変更した、共通通部品も多いのでロスも少ない。

ラインアンプの非反転入力側にイコライザー出力を反転入力側にCDを接続し、一方をアースに
落とすことで他方の入力が選択される方式だ。
設計者の金田明彦氏は「コロンブスの卵2」と命名した。


この真空管が本機に使用する717Aだ。
ドアノブ型とも言われマッシュルームのような
ロシア料理のポットパイのよな、なんとも可愛
らしい真空管である。

TungSol製のWesternElectric向けの
OEM品を使用する事にしよう。

この717Aの前身は私が「水饅頭」と命名した
384/386の電極を横置きにしてUSオクタル
ベース(GT型)を付けたものだ、特性・耐震性が
向上されているらしい。

WEの真空管としては比較的安価で入手も
容易である。
使用する本数は、イコライザーにL、Rch各2
本、フラットアンプに各4本、それに+105V
レギュレーターに1本、+100Vレギュレータ
ーに1本、合計14本だ。

真空管の配線はソケットを使わずピンに直接
ハンダ付けするダイレクト配線で行う。
USオクタルベースは間隔もありピンが太いの
でハンダ付けの作業は容易である。
しかし古い真空管なのでピンとリード線がイモ
ハンダになりやすい、配線前にピンのハンダメ
ッキを慎重にやり直す必要がある。
真空管の固定はインシュロックタイをピンに胴
巻きにする。
ダイレクト配線のため後で真空管交換は難し
い、配線前に選別が必要だ。

選別はイコライザー部と電源を作り、初段にソ
ケットを仮付けして他のアンプでノイズを聴いて
合否の判定をする。
しかしMJ誌の通りに選別しても後々ノイズに
悩まされることになてしまった。

用意した14本の717Aの殆どがマイクロフォ
ニックノイズが不合格になる。
アンプのVRを上げるとハウリングが起きたり、
少しの振動を与えただけでも大きな振動音が
発生する。

また「ガリガリ」「ゴソゴソ」ピーンピーン」など
の不快なノイズも発生する。
その中で良さそうな2本を選んでL.Rchの初
段に使う、次にEc1を測定して差動アンプの
ペアを選別する。


+6.3Vレギュレーター

+100Vレギュレーター

イコライザー

フラットアンプ
電源部はハム対策、そして今後の発展を考慮
してアンプ部と独立したケースに納める。
整流はMT管のWE412Aだ。

プリアンプを作ろうと計画した4年前に購入し
たものだが当時でも1本10000円もした、現
在はもっと高騰しているようだ。
整流管はせいぜい1000円くらいのものと高
を括ていたが、さすがWesternElectricだ。

整流管もダイレクト配線で行う、ピンの先端を
ヤスリ掛けをしてハンダメッキを施す。
MT管はUSオクタルベース以上に真空管の
交換が難しそうだ。

イコライザーには+105Vと+100Vと2台の
レギュレーターを介し給電する。
+100Vレギュレーター1台だけでよさそうだ
が2台のレギュレーターを介することで音が良
くなるそうだ。
この辺は音楽を聴きながら部品や定数を決定
する金田氏のこだわりだろうか。

電源部に+105V、アンプ部に+100Vレギ
ュレーターを配置する。

この+105Vレギュレーターは2SA653を使
う。
このトランジスタは私がDCアンプを作り始めた
30年以上前から金田氏は使っている、しかし
当時から入手困難であった。
いつか使おうと思い3個温存していた、ここ
で日の目を見た。
しかし残念ながら調整中に不注意で2個昇天
させてしまった、現在代用品2SB502に替え
てある。
+100Vレギュレーターは最後の2SA653を
使っている。

ヒーター点灯用の電源はダイオードで整流し
アンプ部に配置した+6.3Vレギュレーター
を介し給電する。
−12dB ATT




6C33C−Bハイブリッドパワーアンプやターンテーブル制御アンプなどに比べると比較的短時
間で完成した。
カップリングコンデンサのSEコンデンサは高価であり、時々パンクすることがあるらしい。
暫定的にカップリングコンデンサは手持ちのV2Aを使い、ようすを見ることにした。

最初、音出しをして驚いた。
フォノのレベルが高すぎるのである、VRを絞り込んでも大音量で鳴る。
狭い集合住宅で聴いているため近隣から怒鳴り込まれそうな音量である、まして夜間はLPを
聴くことができない。
金田氏設計の最近のプリアンプはVRを絞り込んでもレベルは0にはならないのでミューティ
ングスイッチで0にすることは承知していた。
しかしこれほどレベルが高いとは思っていなかった。
CDはVRで0まで絞れるので問題ない。
対策として−12dBのATTを作ってプリアンプとパワーアンプの間に入れてみた。

音は問題なく非常に満足できる、しかし管球式にありがちなノイズに悩まされた。
イコライザー用の真空管を厳選したつもりだったが、いざ音を出すとノイズが大きすぎる。

さらに717Aを10本追加購入してイコライザー部を別に作り選別をした。
なんとかフォノのノイズは実用範囲に収まった。
一安心したら今度は「ブツブツ」とRchからノイズが発生する、MC・CD共に同じノイズが発生
するのでフラットアンプから発生しているのは間違いない。
Rchのフラットアンプ部4本の717Aを軽く叩きノイズが大きいものを交換する。
これによりノイズの発生頻度は少なくなったがまだ時々ノイズが発生する。
1本からノイズが発生していたのではなかった、複数の717Aからノイズが発生していたのだ。
ノイズとの戦いはしばらく続きそうである。


【反省】
電源の調整中にお宝のTr2SA653を2個昇天させてしまった。
◎テスター棒は絶縁テープを巻き先端部を少しだけ出すべし。
◎電源スイッチを切ったあとの平滑コンデンサは抵抗で放電すべし。
これらは設計者、金田明彦氏が常に言っている注意事項だ。
貴重なデバイスを破壊してしまう、要注意だ。


【MJ2007年10月11月号の誤植】 (誤) → (正)
10月号  42頁 「図17」 Tr1→Tr2 Tr2→Tr1
                  T1→T3 T2→T4 T3→T5 T4→T6
       43頁 「図18」 120KΩ 不要
            「図19」 右 120KΩのリード線 各々1コマ右へ
       44頁 「図20」 LM388−Vout 1コマ上
11月号 109頁 「図27」 下 76o間隔の穴2つ それぞれ左へ23o移動
      112頁 中 4行 T3→T5

電源部完成  2007年12月19日
増幅部完成  2008年 3月 4日

2008/7/13


  






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