おくほたかだけ
                  3190m

   
からさわだけ
                 3110m
2001年9月21日(金)〜24日(月)
単独行・車中一泊・山中二泊幕営

上高地⇒涸沢⇒奥穂高岳⇒涸沢岳⇒涸沢
⇒上高地
【1日目】
金曜日の夜、新宿発急行アルプスに乗り松本
へ向かう。
23時50分発なので時間はたっぷりある。
早めに仕事を切り上げて同僚と飲みに出掛
けた、少々飲み過ぎたようだ。
三連休の前日なので山へ向かう人で満席だ
乗車と同時に爆睡する。
東京は雨模様だ。

今回、目指すは涸沢カール。
「明日雨だったらすぐ帰ろう」「天気がよかった
ら穂高岳山荘でうどんでも食べて帰ろうか」
「それとも・・・・奥穂高岳にチャレンジしようか」
出発の朝、河童橋から穂高岳を望むがガスで
見えない。大丈夫かな?

上高地から梓川の左岸をウオーミングアップ
がてらゆっくり歩く。
昨日の酒がまだ残っている、少し頭が痛い。
聖地、上高地で二日酔いとは山の神に申し
訳ない。
今回は荷物が多すぎたようだ。ザックの重さ
は20sを超えている。
肩に重みがズッシリと応える。
横尾に着いた頃には雲も消え晴天となった。
爽やかな空気を胸一杯に吸い順調に進む。
横尾大橋を渡り、岳人憧れの屏風岩を巻く。
切り立った一枚岩が迫ってくる「こんな岩を登
る人がいるのだ、僕には絶対無理だな」・・・
「あたりまえだ、おまえのような素人に登られ
てたまるか!」と叱られているようだ。
三連休とあって人出が多い、数珠つなぎの行
列だ。
山小屋も超満員だろう、テントを担いで来てよ
かった。
のんびり歩いていたら本谷橋に出た。
ガイドブックによると鉄製の橋で冬季ははずさ
れると書いてあったが1999年秋に恒久的な
橋に掛け替えられた。
お決まりのようにここで昼食とした。
川のせせらぎを聞きながらコンビニで買った
おにぎりをほおばった。

本谷橋を過ぎると連続の登りだ。
ザックの重さが応えてくる、テント泊は気楽で
あるが荷物の重さには閉口する。
「もう帰ろうか」なんて弱気になる。
年輩の4人組みのパーティが前をゆっくり歩い
ている、これはありがたい後に付いて歩くこと
にした。

子供に追い越され、にぎやかなおばちゃん連
中に追い越され、おじいちゃんおばあちゃんに
追い越され、ようやく涸沢ヒュッテの吹き流し
が見えて来た。
しかしまだまだ先だ。
お猿さんのお出迎えだ。
涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐点に着いた。
涸沢ヒュッテに向かう、あと一息だ。
ヘロヘロになってようやく涸沢ヒュッテに着いた。
「あー・・きつかった」
上高地から8時間も掛かってしまった。
受付を済ませテントを張った。
急に気温が下がってきた、手がかじかむ、早
めに夕食の支度だ。
ヒュッテに戻りビールと酒を仕入れた、今朝
の二日酔いもすでに忘れている。
残念ながら名物のおでんは売り切れだった。
おでんで一杯を楽しみにしていたが今晩は諦
めよう。
3000m峰たちとビールで乾杯だ。
カールの底から穂高の夕暮れを肴に一人酒盛
りだ。
「友達は大勢あるけれど、穂高さんお前さんと
一緒に飲みてえんだ」圓生師のフレーズを思
い出す。
周りからはそれぞれの山談議に花が咲く。
満天の星を眺めて眠りに着いた、しかしなか
なか熟睡が出来ない。
2時間おきに目が覚めてしまう、その度にテ
ントから首を出して星を見る、星座がわから
なくなるくらいの星の数だ。
テント泊はこれができるから楽しい。
でも僕は山小屋に泊まったことがない。
【2日目】
朝4時に起床、5時15分テント場を出発。
新装なった涸沢小屋のテラスを通って登山
道に向かう。
もうすぐ夜明けだ。
小屋からは樹林帯の中を行く、樹林帯を抜
けると大小の岩が現れる。
これがモルゲンロートか。
蝶ヶ岳から昇る朝日に照らされて赤く染まっ
ている。
日の出の直前が一番美しい。


  ←パノラマ写真
ガレ場を横切るように緩やかな登りを行く。
爽やかな朝の冷たい空気を吸いながら気持ち
のいい登りを楽しむ。
ザイテングラードの取り付に着いた。
ここから標高差300mの岩尾根だ。
取り付きに休憩できる広場がある、すごい人
出だ。
途中一ヶ所、鎖場と小さな鉄梯子がある。
この辺から下りの人とすれ違う。
登りの人が多く、下る人は思うように歩けない、
ここは譲り合おう。
今来た道を振り返る。
涸沢ヒュッテはまだ朝日が当たっていない。
テントが豆粒のようだ。
大渋滞のザイテングラードを登ること90分、
白出のコルに建つ穂高岳山荘に到着。

コーヒーを飲みながら奥穂高岳の取り付きを
見た、昨日からの迷いが一気に消えた。

奥穂高岳に登ろう!!
高所恐怖症の僕は山荘からすぐに始まる2本
の鉄梯子が気になっていた。
ガイドブックで見ると非常に怖く感じていたので
ある。
しかし実際見てみると何とか登れそうだと思え
てくるのが不思議だ、少しハイになっているの
かも知れない。
怖い物見たさで振り返ってみる、かなりの高度
感である。
でも大丈夫だ、鉄梯子と鎖場を過ぎると今来た
ザイテングラードと変わりない。
涸沢岳の山腹にぽっかり開いた窪みがある。
そこから槍ヶ岳が見える、涸沢岳が槍ヶ岳を
飲み込んだように見えるのが愉快だ。
ジャンダルムのお出ましだ。
穂高を守る衛兵らしい凛々しいお姿だ。
もうひと頑張りで山頂だ。
9時30分、憧れの奥穂高岳山頂に立つ。
日本第三位の標高3190m、北アルプス
の最高峰だ。
山頂は大賑わい。
小さな祠に手を合わせて早々にピークを
譲る。
「雲ひとつない」とはこのことか。
遠くに富士山が見える、槍ヶ岳、涸沢岳、常
念岳、蝶ヶ岳、焼岳が見渡せる。
山容で山名が特定できるのはこれだけ。
360度、無数の山々が展開している。


 bP
        ←パノラマ写真
 bQ
昨日歩いた上高地が見える。
河童橋ではこちらを見ながら歓喜の声が上が
っていることだろう。
槍ヶ岳も天に槍を突いている。
しばらく山頂で展望を楽しんだ、しかし憧れの
奥穂高岳を登っても大きな感動がない。
蝶ヶ岳から穂高岳を見たときの方が数倍も感
動した。
あまりにも混雑しているせいか、なぜか冷静
であった。
穂高岳山荘に戻って昼食にした。
3000m上空でうどんが食べられるなんて
なんて幸せなんだ。
山小屋の努力には頭が下がる思いだ。
時間があるので涸沢岳にも登ってみた。
こちらはザレているので落石を起こさないよう
に慎重に登る。
涸沢岳頂上から白出のコルを見る。
山荘の赤い屋根が真下に小さく見える。
山頂からカールの底を覗いてみる。
垂直に切れ込んでいる、かなりの高度感だ。
テント場のテントがビーズを散りばめたようだ。

これだけの山を削り取る自然の力は想像を絶
する。
涸沢に戻った。
さあビールの買い出しだ。
涸沢ヒュッテにダンプさんが居た。
女優の・・・・さんと談笑中だ、顔は見覚えがあ
るが名前は知らない、市毛良枝さんではない。

実はダンプさんのDVDを見て穂高岳登頂の
イメージトレーニングをしていたのだ。
勝手に山の師匠と思い込んでいる。
しかも僕の山道具2セットは殆ど高田馬場の
カモシカスポーツで買い揃えたものだ。
初めて穂高岳を登った日に師匠ダンプさんに
会えるなんてラッキーだ。
【3日目】
早朝テントを撤収する。
いつもの事だが後片付けが苦手で要領が
わるい。

重い荷物を背負いいざ下山開始。
未練たらしく時々後ろを振り向きながら穂高
連峰を見ながら下った。
見栄を張ってゴローの山靴を履いてきたせい
か足が重い。
徳沢園で冷やした信州りんごをがじった、疲れ
た体に果物はうまい。

上高地に着いた。
涸沢ヒュッテ前の標識には「上高地5時間」と
あったが6時間も掛かった、相変わらずのス
ローペースと休憩が多い。

河童橋から穂高岳を見上げた。
昨日ここを登ったんだ、という充実感をみや
げに観光客でごった返す上高地を後にした。
【行程】
【1日目】9月21日(金) 雨
23:50 新宿発 急行アルプス
9月22日(土) 曇り・晴れ
 4:31 松本着
 4:50 松本発 松本電鉄
 5:10 新島々着
 6:50 上高地バスターミナル着
 7:30 上高地発
 8:20 明神
 9:25 徳沢
10:30 横尾着
11:00 横尾発
12:30 本谷橋
15:30 涸沢ヒュッテ着

【2日目】9月23日(日) 晴れ 秋分の日
 4:00 起床
 5:15 涸沢発
 6:50 ザイテングラード取付
 8:20 穂高岳山荘着
 8:30 奥穂高岳登頂開始
 9:30 奥穂高岳山頂
10:15 下山開始
11:10 穂高岳山荘着
11:35 涸沢岳登頂開始
12:12 涸沢岳山頂
12:33 下山開始
13:00 穂高岳山荘着
13:10 下山開始
15:40 涸沢小屋着

【3日目】9月24日(月) 晴れ
 4:00 起床
 5:15 涸沢ヒュッテ発
 8:45 横尾
 9:45 徳沢
10:55 明神
11:40 上高地
12:30 上高地発 バス
13:40 新島々
13:48 新島々発
14:17 松本着
14:42 松本発 特急あずさ63号
17:35 新宿着
18:00 川口着


  










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