2002年6月22日(土) 曇り時々雨
JR東日本
磐越西線 SLばんえつ物語号
新潟⇒会津若松
特に鉄道マニアではないが、むしょうに蒸気
機関車に乗りたくなった。
「SLばんえつ物語号」に乗って新潟から会津
若松まで出掛けることにした。

会津若松は小学校の修学旅行で訪れた街
だ、35年ほど前になる。
新潟はC57「貴婦人」が多く活躍していた、
ともするとこのC57180だったかも知れな
い。
子供の頃、越後線の白山駅近くに住んでい
たのでSLは普段から見ていた、鉄道が無
煙化されて久しいが、イベント用として各地
でSLが復活している。
SL最後の世代の僕にとってはありがたい
事である。
最後のSL運転区間は北海道様似線だった
と記憶している、その頃苫小牧駅でSLを見
たのが最後の現役SLであった。
SLに乗るのは何年振りだろうか。
今と違って家族で旅行する習慣のない時代
なので乗車の機会は少なかった。
幼稚園の頃、伊勢湾台風のお見舞いに父親
に連れられて新潟から長野を経由して名古
屋の親戚を訪ねたことがある、それが僕の記
憶の中では初めてのSLだった。
小学校の修学旅行、中学校の修学旅行の
時も多分SLだった、そうするとそれ以来の
SLと言う事になる。
この「SLばんえつ物語号」は1999年から磐
越西線、新津・会津若松間を運行している。
2002年からは始発を新潟駅として上越新
幹線から直接SLに乗れるようになった。
新潟駅でSLを見るのも久し振りの事であ
る、新潟機関区が無煙化されたのが1972
年であるから実に30年振りである。
客車は昔の雰囲気を残してリニューアルされ
ている、どうせなら客車も昔のままに復元して
ほしいものだ。

油で磨き上げられた木の床、ニス塗りの座席
にフェルトのクッション、ひもで編まれた文字
通りの網棚。
もちろんエアコンなんていらない。
9時26分、汽笛一声新潟駅を滑り出す。

シュツシュツという力強いドラフト音、ツン
ツンと引っ張られるような感触、カタンゴト
ンというレールの継ぎ目を踏む音、響き渡
る汽笛の音、すべてが懐かしい。
沿線では子供達が手を振っている、僕も昔は
こうして汽車を見ていたのだろうか。
このSLは平均速度40q/h最高速度60q
/hという、今では想像も付かない速度走って
いる、汽車の旅はこうでありたい。
出来得れば一瞬でいいから往年のスピードを
出してもらいたいが、お宝を酷使する訳にいか
ないのだろう。
新幹線のスピードは現在の社会では有り難い
が、たまにはこんなのんびり旅もいいものだ。
20分で最初の停車駅、新津駅に到着した。
ここ新津はこのSL、C57180のふるさとで
ある。

昭和21年生まれの戦後派、昭和44年現役
を引退し新津第一小学校の校庭で静態保存
されていた。
小学校までは特別に線路を引いて自力で走
って来たそうだ。
新津駅名物の三色だんごとオレンジカードを
買っておみやげにした。

途中、新津駅・津川駅・山都駅で15分程度
停車する、SLの写真撮影ができる。
その間SLの整備、石炭、水の補給を行う。

ペットボトルの置いてある1号車6番D席が
僕の席だ、混んでいると思っていたが、同
窓会に出席するために帰郷したという初老
の男性と一時間ほど同席しただけで四人
席は僕一人だけだった。
花咲駅付近を通過、この辺で管名岳が見え
てくるはずだが残念ながら雲で姿は現してくれ
ない。

この先からトンネルが数ヶ所ある、トンネルに
入る寸前に窓を閉める。
タイミングをはずすと車内に煙が充満する、窓
の開け閉めと煙のにおいを楽しんだ。
こんなところもSLの楽しみだ。
展望車に行ってみる。

地ビールが売られていたピルスナーであろう
か、とてもフルーティな味わいだ。
あと2本買ってこれもおみやげにした。
今年から展望車を増結して運行している。
展望車では毎回いろいろな催しを行っている、
今日は絵はがき教室を行っている。
日出谷駅名物「とりめし」を買って昼食にする。
とりと卵のそぼろがのった弁当だ、親子そぼろ
めしと言ったところか?
山都駅には名物「山都そば」がある、素朴な
山菜そばである。
それにしても飲んで食べてばかりだ、これも
のんびり汽車旅のいいところだ。
会津盆地に入ってきた、梅雨の雲で覆われ
ている。
もう終着駅に近い。

最後の登りに黒煙を上げて頑張っている。
車掌さんはサービス満点だ、記念写真の
モデルになったり、カメラマンになったり大
忙しだ。
無粋な乗車券拝見もない、僕は乗車券拝
見が大嫌いだ、眠っているのにゆり起こし
たりする。
映画館で上映中に「切符を見せろ」なんて
言うか?キセル防止としか思えない。
でもここは違う、本来のサービスのように
思える。
「SLばんえつ物語号」はゆっくり会津若松駅
に滑り込んだ、約4時間の乗車が短く感じた。

東京駅から新幹線に乗れば広島まで行ける
時間だ。
距離は126qだから新幹線では東京・三島
間の距離に相当する、40分で着いてしまう。
会津若松駅に着いた、隣は最新型のお座敷
列車だ、新旧揃い組である。

会津若松駅前を散策した。
白虎隊の像があった。
「戦雲苦楽陽は落ちて古城に月の陰悲し、
誰が吹く笛か知らねども今宵名残りの白虎
隊」
小学校の修学旅行でバスガイドさんから教
わった白虎隊の歌を思い出す。
違っているかな?

今日のSL運行は片道のみなので各駅停車
で新潟まで帰る事にした。

14時34分会津若松発、滞在1時間12分で
Uターンだ。
同じ列車には機関士、整備士そして絵はがき
教室の先生も新津まで引き返すようだ。
車窓からはC57180が明日の出番までの休
息で格納庫に入るところだ。

「お疲れさま、長生きしてよ」と心の中でつぶや
いて貴婦人に別れを告げた。
しばらく蒸気機関車にはまりそうだ。
SLの運行には手間が掛かる。
停車時間も整備に余念がない、指定席料金
510円は安いような気がする。


  








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